電磁誘導の原理を利用して釜そのものを発熱させる方式の炊飯器を「IH炊飯器」と呼ぶのに対し、従来型の電熱ヒーターを用いて間接的に釜を熱する方式のものは「マイコン炊飯器」と呼ばれる。とはいえIH炊飯器もマイコン(マイクロコントローラ)によって電子制御されており、若干の矛盾をはらんだ呼び方だといえる。
「レトロニム(再命名)」という概念がある。携帯電話の誕生をきっかけにこれまで「電話」としか呼ばれていなかったものが「固定電話」と呼ばれるようになったり、新幹線ができる前は「路線」としか呼ばれていなかったものが「在来線」と呼ばれるようになったり… 新概念の誕生などによって意味が広がった言葉を、以前指していた意味に限って用いるために作られた言葉のことだ。
これに従い、「IH炊飯器」に対して「電熱線炊飯器」や「シーズヒーター炊飯器」のような言葉ができてもおかしくはなかったはずだが、どういうわけか普及しなかったようで、このような小さな矛盾が残る結果となってしまった。
(※)一見すると「マイコン炊飯器」が「IH炊飯器」に対するレトロニムにも感じられるかもしれないが、マイコン炊飯器はそれ以前のバイメタルや原始的な電子制御を用いた炊飯器よりも"新しい"ことを示すために使われ始めた表現であり、IH炊飯器から遡って命名されたレトロニムではない。